同じ会社で働いて早四年。そろそろ仕事にも慣れてきた。だけど未だ上司との付き合い方を模索する毎日。
そんな宙ぶらりん状態で仕事をしていたとある日、友達から一件のメッセージが届いた。
「久しぶり! 急な報告になっちゃうんだけど実は私、会社辞めたんだよね。今月からは東京で働いてるよー! 憧れの都会暮らし!」
衝撃が走った。
転職……? なんだかやりたいことをやっていて楽しそう! 私も今の仕事が合っているのか分からないし、思い切って転職したほうが良いのかな……?
そんな時に見かけた占いの看板。
“霊視します。あなたの将来”
誘い文句に乗せられて、私は雑居ビルの中へと向かった。
仕事占いは当たる、そんな体験談
お店に足を踏み入れて、まず最初に感じたのは“うさんくさい”だ。
外壁、店内に流れるBGM、そしてどこからか漂うアロマも、何もかもがうさんくさいと思ってしまった。
占いって本当に当たるんだろうか……。
そんな疑問を抱きながらも入店してしまった以上は引き返すことは出来ない。
今なら順番待ちも無さそうだし、占ってもらうことにした。
占「初めまして~! 本日はご来店ありがとうございます~!」
私「あの……占いって初めてなんですけど……。ちゃんと占ってもらえますか?」
今思えば物凄く失礼なことを言ってしまったと思う。あなたの占いは本物ですか? って聞いているのと同じだ。
占「ご心配には及びません。ちゃんと……視えていますよ?」
そう言って怪しい笑みを浮かべた占い師さんを見て、私は身震いした。何か私の中身、本質を見透かされたような不思議な感覚。
私「仕事のことを占って欲しいんですけど」
その感覚だけで私はこの占い師さんを信じてみようと思った。
とりあえず看板に書かれていた一番おすすめの三十分三千円。物は試しだ。
占いは霊視がおすすめ、当たりますので
占「仕事ですね。どういったことを占いましょうか?」
私「どういった……? あの、無知ですみません。逆にどういうことが占えるんでしょうか?」
占「何でも良いですよ。職場の人間関係とか占いにいらっしゃる方も多いですし、今の仕事を続けるべきか悩んでいるという方もお見えになります。いかがでしょうか?」
私「私も仕事を変えるべきか悩んでいます。ですので、今の仕事を続けて良いのかどうかを占って頂けますか?」
占「承知しました。霊視でよろしいでしょうか?」
私「れいし……?」
言われてもピンと来なかった。霊視って……私の背後に何かいるんだろうか。背後霊とか。だとしたら恐ろしい……。
占「こちらの用紙にお名前を書いて頂きまして、それを私が霊視します」
私「名前だけで良いんですか?」
占「はい。こちらにフルネームでお願いしますね」
占い師さんが取り出した用紙は何の変哲もない、ただの紙。念の為、透かして見たが何も細工は無さそうだった。
私は占い師さんに言われるがままに自分の名前を記入した。
仕事を変えるべきか占いをしてもらったら…
占「記入ありがとうございます~! それでは……視ますね?」
さっきと同じ不思議な感覚。私の本質を見抜くような鋭い視線。占い師さんが霊視をする間は呼吸をすることすら憚られる。そんな張り詰めた空気。
占「…………中学時代に何か嫌な事でもありました?」
私「えっ。……どうして?」
占「視えましたから」
心臓がバクバクと鳴っていた。だって占い師さんが言っていることは正しい。本当に当たっていたから。
占「人を信じられない、人間不信気味……って感じですかね?」
私「そうですね……」
ただ頷くことしか出来なかった。
占「会社でも上司からかけられる言葉が信用できない、不安。そんな感情が視えました」
私「そうです……。期待してるとか、君なら大丈夫だとか。この人は口だけで言ってるんじゃないかって。正直、今の仕事が自分に合っているかも分からないです」
占「私が視えたことを正直にお話しますね」
私「はい。お願いします」
ドキドキしながら占い師さんの次の言葉を待った。どんな言葉を放つのか想像も出来ない。
占「今から半年以内に必ず転機が訪れます。今後、上司との関わり方ががらりと変わるような出来事が起きます」
私「異動とかですか……?」
占「異動とは限りません。私から言えることは今の曖昧な関係は終わるということだけです。転職も良いですが、その転機が過ぎてから考えてみてはいかがでしょうか?」
私「半年以内、ですよね。……分かりました」
元々どこかに転職する予定なんてない。一旦、この占い師さんの話を信じて仕事を続けてみよう……!
まとめ
結論から言いますと占いに行ってから一年以上経ちましたが、今も私は同じ会社で働いています。
占い師さんの言葉を信じ、まずは半年間働いてみようと思ったのです。
すると二ヵ月を過ぎた頃、衝撃的な出来事が起きました。
上層部より上司と私の二人で他県に長期出張に行くことが告げられました。
もちろん不安でいっぱいです。長期出張自体が初めてだったし、上司と二人きりだし。
だけどこれが占い師さんの言っていた転機だと信じて私は承諾しました。
上司と二人だけで他県に行く。その経験のおかげで私たちの仕事のスタイルはがらりと変わりました。
上司「ずっとどう接して良いか分からなかったんだよね。今回の出張でたくさん話せて良かったよ。これからもよろしく」
私が上司に対して何を考えているのか分からなかったのと同様に、上司も丸きり同じことを考えていたことが分かったのです。
二人とも恐る恐る相手の顔色を窺っていたなんて。なんだか少し可笑しいですね。
私たちはこの長期出張を機にたくさん話をするようになりました。当然仕事もスムーズに進みます。
占い師さんが必ず転機が来ると言ってくれたから、仕事を辞めずにこうして上司と仲良くやれています。
あの時、何も考えずに転職していたらどうなっていたかは考えたくありません。
仕事を変えるべきか悩んでいるそこの貴方。
霊視占い、おすすめです。
占い師さんは“全て”視えていますよ?